「手と心が一致していない」
西山 真来 監督・主演
Story
不倫相手が交通事故で死んだことを知った女は、動揺する。事故の直前、一緒にいたのは自分だ、と気づいた女は、自分の存在がばれるのではないかと動揺する。
しかし実際には、誰も自分の存在に気がつかなかった。不幸中の幸いー。なはずなのだが、女の心はざわついてくる。
なぜ、誰も自分に気づかないのかー。女は自分の存在を証明するため、危行に出る。
監督コメント
はじめまして西山です。
普段は俳優をしています。
お話を頂いたとき、とてもありがたいけれど監督をしたこともないし、撮りたい画も語りたい物語もないので、と最初はお断りしました。でも、ふと「やりたい演技の実験ならある」と思いつき、それを受け入れて頂き、このトライが始まりました。
やってみたかった実験は、できるだけ「やらなければ」をなくして「やりたいこと」だけで反射しあう場作りです。俳優さん、脚本家さん、現場スタッフさん、ポスプロスタッフさん…みんな含めてそういう対話と反射の場にしたかった。バンドやったことないけど憧れていて、バンドみたいに作りましょう、とみんなを誘いました。結果的に脚本家さんに出演もしてもらったり、プロデューサーさんがカメラ回したり、俳優さんにも台詞書き足してもらったり、みんな少しずつ専門外のこともやることになったのですが、不安定さが増した分、自由度も高まったような気がします。(結果オーライ)
あと、初めて監督という立場になり、俳優も働き方の問題が昨今顕在化しているけれど監督こそまさに、と思う場面が多々ありました。これは業務外では?とか、この支払いが当たり前に監督の持ち出しになるの?などと感じることも少なくなかったです。一つずつ問題に立ち向かって話し合いを重ね、よりよい自分達の方法を各部署と模索しました。なかなか難しい判断の連続だったけどとても大切な時間でした。みんな、ほんとにありがとう。
上記の実験は自ずと、実際の生活や人間関係を抽象化して演じ直すことになりました。そしてカメラマンがそれを収めてくれました。満足です。
実験結果は10年後くらいに。
Cast & Stuff
Cast
西山 真来 三間 旭浩
安藤 真理 中村 友則
近藤 強 弥重 早希子
松浦 祐子 山本 大樹
Staff
制作 畠山 隼一
撮影 百々 保之
撮影協力 ぷのんペン
録音 山崎 立樹
酒井 善三
ヘアメイク くつみ 綾音
ヘアメイク応援 齋藤 佳野
編集 酒井 善三
グレーディング ぷのんペン
音響効果 佐藤 恵太
整音 鈴木 一貴
ロケ地協力 フォーシーズン
横山家
協力 蒲池 貴範 荻野 祐輔
畠山 幸雄 レトル
大沢事務所 青年団
フォノンスコア
日活株式会社
製作 株式会社DrunkenBird
脚本 弥重 早希子
製作・プロデューサー
百々 保之
監督 西山 真来
Cast introduction
三間 旭浩
監督コメント
映画監督。「ユートピアサウンズ」「私は兵器」など監督された映画が好きなのですが、マレビトの会の演劇に俳優として出演されているのをみてお願いしました。 言葉や感情の表出が、他でみたことない魅力に溢れています。
安藤 真理
監督コメント
チェルフィッチュ、モメラス、サンプルなど多数の演劇作品に出演されており、その演技の繊細さ、パワフルさにずっと魅了されています。 今回は不倫相手の奇妙な妻を絶妙なリアリティーで演じて下さってます。
近藤 強
監督コメント
青年団所属。玉田企画、犬飼勝哉、ウンゲツィーファ、劇団普通、東京にこにこちゃん、渡辺源四郎商店など面白い小劇場全部出てるやん、と俳優仲間から羨望と称賛! 今回は少しオカシな警官を演じて頂きました。
松浦 祐子
監督コメント
現場での急遽のセリフ変更などにもご対応頂き、現場力を感じたり、ポスプロも映画に寄り添って頂き大変頼りにさせて頂いております! 今回はキーとなる重要なシーンにご出演頂きました!
山本 大樹
監督コメント
ニュースキャスター、芸人、ナレーターの三役を声で違和感なく演じて下さいました。この名人芸をみてほしい!ギャラクシー賞受賞のラジオドラマ「弁慶記」の弁慶役が凄くて、ダメ元でオファーしたら受けて下さいました!
弥重 早希子
監督コメント
本作脚本家!現場をみて色々書きかえて頂いたり、出演までして頂きました!
アドリブですか?と観て頂いた方に言われる、生々しい脚本を書いて下さいました! 超個人的かつ普遍的。
黒川幸則
映画監督
カーディガンのたすき掛け。これにははげしく嫉妬した。西山真来のコメディエンヌとしての魅力を知っているのは私自身しかいないと言わんばかりの西山真来監督の軽やかなデビュー作。みんな西山真来大好きになる「手と心が一致していない」宣言!
山科圭太
映画監督
映画冒頭。女がソファーで目覚めたよう。台所に行き片手で口をゆすぎ、オタマで鍋の味噌汁を味見する。女は歯を磨き、テレビのニュースで誰かが事故で死んだことを知る。男が帰宅し、ソファーへ。帰宅した理由を話しているようだが何を言っているのか分からない。男は「めいぼ」らしい。女は動揺していて、上手く言葉を発せない。男は買ってきた大福を女に薦め、キッチンへ。女はようやく心を取り戻したように、「めいぼ」と発する。そして「めいぼ」が何なのか分からないまま、タイトルが重なる。僕は「あ、とんでもない映画が始まる」と確信しました。
和田光沙
俳優
西山真来という女優は、どこか妙です。
その掴みどころのない吸引力はいったい何だろうと、彼女の芝居や映画を追ってきました。
今回、西山さんの説明付き上映『ミーマイシーオーソレーション』を観て、西山さんの脳内を少し垣間見たような気がしました。
芝居をすることにずっと抗い続けていた人なんだと思いました。役者なのに!
役者は簡単に嘘をつきます、
自分の吐く言葉が真実になることを信じて…
しかしそんなこと、容易ではないことを西山さんはずっと昔から知っていて、その事にとてつもなく真摯に大真面目に向き合い続けている人です。
もしくはものすごい変態です。(良い変態)
西山さんは、今回の上映を機に『これからはちゃんと演技を頑張る』とどこか吹っ切れたようでした!
これまでのどこか居心地の悪そうにこちらを見つめる女優・西山真来も好きですが、それはこれまでの映画でまた会えるとして、これからの西山真来第二章が楽しみでなりません。
大石恵美
ダダルズ主宰
西山さん!
本当に今日は面白かった。西山さんは混沌の中に自ら入っていく勇気があって、しかもその混沌の中から創作していく強さがあるなあと胸がいっぱいになった。それは誰しもができることではないから。
みんな形にすることを正しいとするけど、今日はそれとは真逆の時間で、こんな怖いことをよくできるよなあと思ったし、やっぱり提案者自身、どうなるかわかんないものが1番面白いよなあとも改めて思いました。
こういうものってなかなか無いと思うから、出会えて本当に嬉しかったです。
企画してくれてありがとう。
そして、西山さん企画のものもまた見たいなとも思いました。
結城秀勇
映画批評
NOBODY編集委員
めいぼ、めいぼ、めいぼ……、名簿?あ、目イボ!とわかったときには、既に夫婦の会話は「カエル」や「塩」のような突発的な単語によって引き裂かれていて、もはやつなぎとめることができない。そんなふうにこの映画の中には、「手と心が」バラバラになり、つなぎとめられるべき理由などはるか昔に忘れ去ってしまった私たちの寄る辺なさが、細切りにされる途中で放置されたピーマンのように散らばっている。
だが同時に、その寄る辺なさによって私たちはギリギリつなぎとめられてもいる。カニ食べに行きたくなるようなメロディが、建物の外をたまたま通り過ぎた車の爆音のカーステの音が、夕暮れ時をしめすチャイムが、登場人物たちの間を流れる。
西山真来は、ピーマンの細切りどころか、手首をナタで切り落とすような激しさで私たちの寄る辺なさをつなぎとめる。それは私が「俳優監督」と呼びたくなる人々の特質の一部でもある。
辻凪子
俳優・映画監督
西山真来さんは最も不可思議な女優さん。監督主演をされた『手と心は一致していない』は魅惑的な曖昧さがどこかへ連れて出してくれる。他の2作品は全く違う作風なのに共通するものがあって、これはおもしろい企画ですね。